対岸の彼女作者: 角田光代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/11/09メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 54回この商品を含むブログ (381件) を見る

友達に借りて読んだ。
子どもを保育園に預けて或る会社で仕事を始めた女性の物語と、その会社の女社長の高校のときのエピソードが交互に進む。直木賞受賞作。


すごく良かった。
主人公の女性のことがまるで自分のことのように感じられて、心のどこかで声援を送っていた。主人公達は、自分の周りに微妙な心のバリアを張っていていまいち周りに溶け込めないでいる。周囲の人たちと仲良くなりたいのだけど、なんとなく踏み込めない。人付き合いが全く苦手なわけではないのだけれど、その歯がゆいもやもやした気持ち。
主人公だけではなくて、その夫や職場の同僚にまでなんとなく共感できてしまう。それぞれ違った人たちなのに、どこか自分と同じ足りないものがあるような、それぞれの抱える不安や不満が理解できるような気がするのだ。
作者はそんな気持ちを否定も肯定もせずそっと見守ってくれる。


それにしても難しい漢字や意味が分からない言葉、難解な比喩。そういった要素が全くない読みやすい文章なのにこんなに深みを感じるのはどうしてだろう。


この本を貸してくれた人は気になる箇所に傍線を引くタイプの読書家で、いくつかのページにマーカーのラインが光っていた。

わたしたちは何のために歳を重ねるのだろう。

文中には主人公の出した答えが有ったけれども、すこし自分なりの答えについて考えてしまった。