風の歌を聴け (講談社文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/09/15メディア: 文庫購入: 43人 クリック: 461回この商品を含むブログ (466件) を見る

村上さんのデビュー作。彼の作品は好きなのだけれどこれは未読だった。そもそも恥ずかしながら全ての作品に目を通した作家というのが未だいない。


人生とは失うことなのか?と思ってしまうくらい失うこと或いは失われつつあることについて書かれた作品。ユーモラスで感情は控えめに書かれていてもやはりせつない。人は生きていく中でいったいいくつの不条理に耐えなければいけないのだろう。


不条理の連続の中で得るべき教訓を探すとすれば、

文明とは伝達である、と彼は言った。もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ。

という一文。



もしアラバキに行ったことを誰にも言わなければ、俺はアラバキに行っていないのと同じことだ。そのことを公言しているからこそ、社会的にはアラバキに参戦したという事になる。
この本だって、感想書かなきゃ読まないも同じだ。
このブログは表現するために存在しているのだし。
或いは自分が存在していることを示すためにひとつひとつ表現しようとしているのかもしれない。


俺の文章は自分にとっては価値が付けられないものだ。内容のわりにはそれなりに時間や脳味噌を使っているつもり。一方で世間的には違う意味で全く価値がつけられない。どれだけ書き連ねたって金銭価値としてはゼロだろう。
金銭価値がなく、対価が発生しないからこそこうして自由に文字を綴ることができる。対価を得るにはそれ相応のものを用意しなければならないが、そんなものは現時点では用意することができない。できないからこそ受け手の事を必要以上に意識しなくて済む。
期待されないまま自由にやるのは気楽でいいものだ。
自分は気楽な存在であることを楽しみたいと思う。