誕生日の子どもたち作者: トルーマンカポーティ,Truman Capote,村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (27件) を見る

村上春樹が訳すカポーティーの短編集。図書館で借りた。
カポーティの子供の頃を舞台にした半自伝的な物語が半数。
本当良かった。素晴らしかった。これ自分で買おうかなってくらい。
村上春樹カポーティもすごく好きな作家なので、夢のコラボといっていいのかも。


とにかく文章が美しい。

田舎では、春はいくつものささやかな出来事を地上にひっそりともたらす。


という一節は田舎で過ごしたものにとっては堪らないし、


暮れなずむ光と夕闇、そして静寂と呼ばれる音の繊維が艶やかな青色の仮面を紡ぎあげた。

という文章にいたってはため息しかでない。どうしてこんなに違うんだろう。


それから、この短編集では子どもの持つ「イノセンス」(無垢さと訳されていたけど、大人になると失われてしまうきらきらしたもの)がテーマになっている。
例えば、「あるクリスマス」で主人公の少年は別居している父親のところへクリスマスを過ごしに行くが、サンタクロースがいることを信じている彼は父親がクリスマスプレゼントを用意しているのを目撃しショックを受ける。そして父親は酔っ払って「サンタなんていない」と言ってしまうのだ。
読んでいて胸が痛くなった。少年は純粋だし、誰も悪くないのに誰かが傷ついてしまう。
カポーティは大人になってもイノセンスを心の奥に保ち続けていた。それは生涯失われなかった。自分はどうだろうか。