幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)作者: クラーク,池田真紀子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/11/08メディア: 文庫購入: 31人 クリック: 146回この商品を含むブログ (222件) を見る

世界中に無数の未確認飛行物体が飛来し、高度な文明を持ったオーヴァーロードが人類の進歩を導く。1953年の作品。


新訳だからなのか、作者が冷戦終結後にその記述を書き直したからなのか、ほとんど古さを感じない。1950年に2050年のことを書いたりしているからそりゃ多少は不自然なことはあるけれど(新聞がFAXでくる)、こういう未来もあるのかなと思わせられてしまう。それはきっと作者が科学技術についての知識とその役割を深く分かっていたからなのかな。


不自然さを感じない理由はもう一つ。書かないでいる部分が多いことだ。例えば未来の車の描写。エクステリアやインテリアについて細かく記述すると絶対に時代や感覚とずれてしまう。だから読者の想像に任せている。何を書くべきで何を書かないかっていうことに細心の注意が払われているんだろうな。
宇宙人の描写も、おおまかな大きさとイメージにとどめていて顔についてはほとんど書かれていない。小説でしかできないやり方だと思う。


作者は2001年宇宙の旅も書いていて、両作品には同じモチーフが登場する。人類が将来そういう方向には行かないだろうとは思うけど、それもありえるのかな、オーヴァーロードのような進歩とどちらがいいのかなとかちょっと考えさせられた。


それから、本に挟まれていたしおりに主な登場人物が書かれていたのも嬉しかった。小さいことだけど親切。