手は口ほどにものを言う

インド人は食事をするとき右手を使う。
五本の指を総動員して、スプーンのように、フォークのように。
食事の後は指の付け根か手のひらまでスパイスで黄色く染まっている。


同じように手を使って食事をしようとしても、俺はいまいちうまくいかない。
無意識に手をつかわないようにしてしまうから。
日本の食事作法としては、箸をなるべく先端だけ使って汚さないようにするのが美しいのだとどこかで読んだ事がある。
全部使うのは美しくないのだ。
日本語で「手を汚す」というのは「罪を犯す」という意味でもある。ex俺の手は汚れてきっている、とか。
それに「手を出す」よりも「手を引く」ほうがいさぎよいし美しいというイメージがある。「手を下す」のも良くない意味合いだ。
日本人にとっては、手は使わないほうが良いこととされているんじゃないだろうか。意識的にも無意識的にも。
特に他人の手を使うことは、「手をさしのべる」人がいても「手を煩わせるわけには行かない」なんて言って断ってしまう。
そういえば「手を出す」と一緒で「口を出す」もあまりいい意味合いでは使われていないかも。


なんでも「口を挟み」「手を出してくる」インドの文化と、
表面上はなにもせず「背中で語る」日本の文化はまったく違うのだということを
言葉の上でも旅の中でも強く感じている。