ガキっぽくない?

土曜日、買い物に行ったときのこと。
ぼおっとグレゴリーのデイパックを見ていたら、後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると、中学の同級生トシオ君だった。
 
彼とはこのまえの飲み会で10年ぶりくらいに会って以来。
長めの髪にシャネルのロゴ入りサングラス、黒のジャケットに胸の開いたシャツ、古着加工のデニム。声を掛けられなければきっと俺は気付かなかっただろう。
なんというかセレブっぽい格好だし、濃いサングラスで目が見えないし。
俺はベースボールキャップにストライプのシャツとコーデュロイパンツ。
「久しぶりだなー 元気?」「何してんの?」なんて話して。
何買いにきたの?って聞かれて、いやー旅行用のリュックを見てるなんて言って。
トシオは「そうなの!?でもこういうのってガキっぽくない?」なんて明るく笑う。
「俺はやっぱブランドのバッグじゃないと駄目だな。シャネルとかグッチとかヴィトン。仙台で10万くらいで売ってるぜ」そんなふうに真顔で言う。
   そうなのか?ナイロン製のバッグはガキっぽいのかな?内心ショックを受けながらも話をあわせる。うーんそうかもな。やっぱ革使ってるのがいいかな。
「じゃあここじゃなくていいじゃん。決まったな」ってトシオは笑うんだ。
 
少ししてわかれたけど、そのとき話した違和感はしばらく残ったままだった。
俺はガキっぽいのか?26歳にふさわしい格好ってなんなんだ?どうしたらいいんだ?
ジャケットに穴あきデニムなんて格好が標準だとは思えないし、自分には似合わないとも思う。かと言って自信をもって主張できるスタイルなんてまだ確立できていない。
ブランドを礼賛する気持ちは全くない。サングラスもアクセも財布もシャネルなんてどうかしてるよ。それって趣味いいのか?
俺はそうやってブランドを真っ向から否定することができなくなってきている。やっぱブランドの「ロゴ」が持つ力のようなものは大きいのだろうか。大学生だった頃のように、「自分には関係ないですから。」という姿勢を保てないでいる。腕時計はオメガがいいかな。なんて思う自分がいるから。

要するに自分を確立できない奴の、曲がりなりにも自分の個性を主張してる奴に対する僻みと焦り。なんだろうか?
 
はっきりといえる収穫は、どうしようか悩んでいたデイパックは革を使ったものにしようと決めたことだ。