増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫)作者: アンネフランク,深町眞理子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/04/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 65回この商品を含むブログ (79件) を見る

第二次大戦中、ユダヤ人の少女アンネ・フランクナチスから逃れるため家族らと一緒に「隠れ家」に潜む。潜伏が発覚し逮捕されるまでの2年間の記録。


世界的に有名な日記。なのに読もう読もうと思いつつも今日まで未読だった。この日記を書いたときアンネは13歳〜15歳。なのにすごく文章が上手い。自分が感じたことをそのまま文章になってる。例えばお母さんとけんかした時、お母さんのどこが嫌でいらだっているのかがしっかり日記に書かれている。自分の中学生の頃と比べたら立派の一言だ。


アンネは生活のことを包み隠さず書いている。隣のうちのおばさんの性格が気にくわない事、ブリキのおまるを使うとどしゃ降りみたいに激しい音がすること、足の小指をぶつけてすごく痛かったこと・・・。誰かの誕生日やクリスマスは特別に楽しい日だ。いつ終わるか分からない生活の中で楽しみは多くはなかっただろうし、そこでは日記を書くことすら欠かすことのできない楽しみの一つだったんだろうな。


面白かったのは、隠れ家に住む人たちは家の中から一歩も外に出ることができないし、ずっと同じメンバー(3世帯8人)でやっていくしかない。それなのに共同体の和よりも自己主張を優先しているように思えることだ。肉の美味しいところがあれば他人に渡さず自分で食べたいし、不平不満があればはっきりと口に出していうし、それが原因で何日も口を利かない事だってある。閉鎖的な空間なのだから日本人だったら絶対とりあえず表向きは仲良くやっていこうとするところなのに、これが民族性の違いというものなのだろうか。確かに自己主張は大切だけど、こういう状況でもそれをとおすのか!とちょっと感心してしまった。


日記に記された日々は密室でのドタバタがありながらもなんとか過ぎていく。例えば三谷幸喜の脚本のように。だがそこに最後の日は記されていない。ある日突然ナチスがやってきて隠れ家に住んでいる8人を強制収容所へ連行したからだ。アンネの人生は不条理に断ち切られてしまった。毎日戦争が終わることを願いながら勉強を続けていたのに、好きな男の子もいたのに、将来は文章を書く人になりたいという夢があったのに。彼女は戦争の終わりを待たずに亡くなってしまった。
日記に記されていた言葉

私の望みは、死んでからもなお生きつづけること!


その望みは今も日記が読まれることで叶い続けている。そして将来においてもずっと。そう願いたい。そしてアムステルダムに行くことがあれば、是非彼女達の暮らした隠れ家を訪ねたいと思う。