カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント発売日: 2007/03/16メディア: DVD クリック: 28回この商品を含むブログ (109件) を見る

作家カポーティが殺人事件とその加害者を取材し、ノンフィクション「冷血」を書き上げる。
作家は取材を重ねる中で作品が傑作になることを確信する。だが、作品が完成するためには事件が終結することが必要だった。作家はすみやかな結末、つまり加害者が死刑になることを暗に望むようになる。


カポーティは社交的で冗談をたくさん言って皆を笑わす陽気な男。だけどひどく落ち込む事だってあるし、独りベッドにいて起き上がりたくないことだってある。彼の文章みたいにすごく繊細で危うい。


死刑を待つ囚人には会いに来る家族がなく、友人もおそらくいなかった。カポーティを除いては。わざわざ面会に来て自分の話に真剣に耳を傾け、自分の存在を記録に残そうとしている作家は囚人にとって
かけがえのない存在であったことだろう。しかし作家からすれば、友人ではあってもあくまで作品のために生まれた関係であるし、作品を書くこと以外に長々と関わってはいられないんだろう。この作品をとっとと片付けて次に取り掛かりたいと思うことだってきっと有っただろう。


囚人は一家四人を殺害したのだが、始めから殺害するつもりではなかった。辛い状況からとにかく逃れたくて銃の引き金を引いたのだ、と感じた。作家も、辛い状況からとにかく逃れたいと苦しむ。人間はしんどいときに苦しみの原因から目をそむけたり、見なかったことにして放っておこうとする。試験の日に学校をさぼろうと考えるように。その行為はあとになって10倍になって跳ね返ってきたりするけど、そのときはそうすることしかできないんだ。


冬の澄んだ空気がとても綺麗、静的な映像がまぶたに残る。
ラストの台詞も静かで冷たくて残酷で、いつまでも胸にひっかかっている。