帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書))作者: アーシュラ・K・ル=グウィン,マーガレット・チョドス=アーヴィン,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1993/03/25メディア: 単行本 クリック: 22回この商品を含むブログ (44件) を見る

アースシーの風 ― ゲド戦記V

アースシーの風 ― ゲド戦記V

ゲド戦記3部作の18年後に出た4作目(最後の書)と5作目(アースシーの風)。


3作目でゲドは持っている力を使いきり、魔法の力を全て失ってしまう。そのためゲドは故郷に帰り普通のおじさんのようにヤギを飼ったり農業をして暮らすことになる。何十年もかけて培い、自分の運命ともっと大きな運命を決定付けてきた力。それを失うことは自分の身体の一部を失うことにも等しくて、気持ちが落ち着くまでは人と会いたくないし放っておいてもらいたいと思う。自分はもう終わった人間だ、何も残っていないとさえ思う。


だけど、自分ではそんなふうに思っていても必要としてくれる人はいるし居場所だってある。たとえ今何もできないとしても過去に何もしなかったわけじゃないし将来ずっと何もできないわけじゃない。


1作目から3作目が戦うこと、それによって獲得することを描いた物語だとすれば、4作目と5作目は守っていたものを失うことを描いた物語だ。


何を失ったって、大切な人や、その思い出があれば生きていくことはできるんじゃないか?ファンタジーであることすら捨てても訴えたいものがあることを感じられるような気がする。