旅をして帰ったから気付いたこと

afterashita2008-08-27

クルマを運転しながら

SOUL電波

SOUL電波

を聴いていた。去年買ったアルバムで、そのときは聴いていたのだけれど最近はご無沙汰だった。


8曲目「路面電車」を聴いていたら笑いがじわっとこみ上げてきた。
昭和の町並みの中をガタンゴトン鳴りながら路面電車が通るという、そのくらいの歌詞の曲。これまではそう認識していたんだけど、違った!
曲を通してキーボードのちょっと変わったフレーズがずっと鳴ってて、それがこのまえの旅で聴いた音楽にそっくりなのだ。
6月から7月にかけての旅で、俺はベトナムラオスをバスで何時間も何十時間も移動した。そのバスの中で大ボリュームでかけられていたベトナム歌謡?ラオス歌謡のメロディなのだ。あちらの歌謡曲に興味なんて無かったし曲名だってひとつもわからない。しかし何曲も何十曲も聴かされた耳にはクレイジーケンバンドの曲にあちらの音がのっかっているのははっきりとわかる。そのまんまだから。
そういえばこのアルバム制作の前に横山剣さんはバンコクに出かけていたんだっけ。そこで仕入れたネタに違いない。
リズム感の足りない、盛り上がるのか盛り下がるのかよくわからない、なまぬるい雰囲気がそのまま移植されている。そこに日本語の歌詞がのっかっているのは不思議で、いや、旅で聴かされた音楽を日本の自分のクルマの中で聴くのが違和感バリバリで、笑わされてしまったのだ。


今日はその生ぬるいフレーズが頭の中で延々ループして離れてくれない。
苦笑いしながらなまぬるい夜を過ごしている。




それから、2〜3年位前に買った本、

ベトナムめしの旅

ベトナムめしの旅


ふと思い出して開いてみた。
俺はこの本の内容を全然覚えていない!
ベトナムの各地を訪ねて、時には地元のおばさんから伝授してもらったベトナム料理とそれにまつわるエッセイの本なのだが。読んだ料理のことを8割方忘覚えていない。
さすがにフォーとかブン(両方お米の麺)とかそのくらいは覚えていたけど。
それだってトッピングの詳細まで覚えていたわけではない。


もし現地に出かけていなかったら、本の内容など99%忘れていたかもしれない。
それはなぜだろう。
あまりにわからなすぎたからだ。


知らない国の、知らない街で、知らない食材で作られる未知の料理。
そんなものを正確に記憶できるはずがない。
味だって説明でしか分からないんだから。想像だってできるはずがない。


養老孟司先生が書いておられた。脳の中の味覚や嗅覚を司る部位は言語を司る部位と遠い位置にある。それゆえ味や匂いを言語化することは難しいのだと。
だとするなら、言語化された他人の味や匂いの感覚を読んだところで、いざ実物にふれてもそれが同じものだと認識するのはかなり難しいのではないだろうか。
世の中には体験しないと分からないことというのはたくさんある。
例えば美味しいものを食べるという事。


食べ物は食べてみないとわからない。
当たり前のことだけど改めて分かった。
これもきっと旅の収穫。




写真はベトナムホビロン。孵化しかけゆで卵。
意外と美味しい。